IGS伊藤鉄工の比較的古い桝蓋に見られる社名表記についてまとめてみたい。
そもそも「IGS」とは何の略か。
「I」はそのまま「伊藤」であることはすぐ分かる。
「G」は創立当初の社名の「合名」。
「S」は諸説あったが、同社に直接聴いた方がいらして「商会」だと分かった。(注1)
同社のHPの沿革を見ると、
昭和6年 伊藤合名会社創立(伊藤林蔵・寅吉・幸大の3兄弟)ストーブ製造開始
昭和32年 伊藤鉄工株式会社設立 とある。
また、昭和6年の創業時は「伊藤合名商店」、昭和28年から「伊藤鉄工」になったとの情報もある。(注1)
これらの情報をまとめると、
昭和6年 伊藤合名会社創立
昭和28年 伊藤鉄工に改称
昭和32年 伊藤鉄工(株)設立 と考えてよさそうだ。
これらの情報を交えて話を進めていく。
なお、蓋の記述「MANUFACTURED BY 〇〇〇」のうち「MANUFACTURED BY」は「製造は」ぐらいの意味であり、字体の違いはあるが社名表記の変遷には直接関連性が無いので本記事では対象外とする。
正確性を期するため同社に問い合わせのメールをしたが、返信は頂けなかったので筆者個人の独断による記事だと言う点にご注意ください。
【「伊藤合名会社」時代】
蓋には社名表記「ITOGOMEI.CO」とあるが、この「CO」は「company」の略であるが株式会社を意味するものではない。
むしろ仲間、友達、友人と言った意味だ。
事実、伊藤林蔵・寅吉・幸大の3兄弟による合名会社が由来だろう。
戦前の蓋を見ることはまずできそうもないので、戦後の蓋で見ることにする。
警察予備隊と思われる蓋。
手元にある蓋で製造時期がほぼ分かるものとして、警察予備隊の蓋がある。
自衛隊の前身にあたる警察予備隊は昭和25年8月10日に設置され、昭和27年10月14日まで存在した組織。
その他の例としては比較的古い雑居ビルの敷地内に汚水桝の蓋として、或いは警察の信号ケーブルの蓋などで見ることができる。
2023年最初の探索で変種が確認できた。
『BY』の後ろと『CO』の前にピリオド(.)が存在しない。
蓋全景。
念のため撮影した程度の意識だったのでゴミが載っている。
まさか新種の変種と知っていたらもっと綺麗に撮ったのに。
【「伊藤鉄工」時代】
法人になる昭和28年からの蓋である。
表記は何度となく変わっている。
変遷の順番については資料が無いので不明であるが、直感で古いと思われる順にする。
【ITO-TEKKO表記】
表記は「ITO-TEKKO」になっている。
伊藤合名から伊藤鉄工へ社名が変わり、急いで作った感がある。
粗削りのような感じで如何にも間に合わせ?のような印象を受ける。
「ITO-TEKKO」蓋、全景。
下記に記す「ITOTEKK.CO」とこの蓋どちらが先か、ずいぶん迷った。
決め手となったのは、こちらの蓋にはバリエーションが見られない。
期間が短いゆえに無いのだと、結論付けた。
この表記は法人化する前のものではないだろうか。
【ITOTEKK.CO表記】
「ITOGOMEI.CO」の表記のうち、「GOMEI」の部分を削り「TEKKO」を挿入したものと思われる。
文字の大きさが違うので一目瞭然だ。
「ITOTEKKO.CO」の全景。
倉庫に眠っていた?「GOMEI」表記の木型を流用したのかもしれない。
【ITOTEK(K)O.CO表記】
これはエラー蓋と言った方がいいかもしれない。
二つ目の「K」が抜け落ちており、その痕跡だけがうっすらと見える。
木型に貼り付けた「K」が砂型を作る際に取れてしまい、接着剤の痕だけが反映されたのかもしれない。
二つ目の「K」抜け蓋、全景。
【ITOTEKKO.CO表記】
文字の大きさは全て同一であるが「CO」の前、本来ならば「.(ドット)」になるべき所が「:(コロン)」のようにも見える。
或いは「・(中黒)」の可能性も考えられるが、点の位置が真ん中よりも上にあるし…。
「ITOTEKKO:CO」蓋、全景。
【ITOTEKKOK.K表記】
「K.K」表記の蓋も一枚だけ確認できた。
「ITOTEKKOK.K」表記の蓋、全景。
(注1) 情報元は以下のところです。
(2023.01.22) 合名蓋の変種について記述を追加した。