特殊人孔蓋

特殊人孔蓋についてはこれまでにも何回か記事にしているがここで改めてまとめてみたい。
この蓋については駅からマンホール氏が詳細な記事(下水君100周年・特殊人孔蓋)をお書きになっているのでそれを基にして進めることにする。
是非一読ください、それによってこの記事が一段と分かるようになります。

それでは話を進めていこう。
『特殊人孔蓋』という名称を聞いたことの有る方はごく一部だろう。
でも写真をご覧頂ければ、「あぁ、この蓋なら見たことが有る」と言う方も多いはずだ。

特殊人孔蓋の例。
蓋の枚数を調節して使うことができる汎用性の高い蓋。
最大九連まで可能と仕様書には有る。
写真は左より、短足都章縦(左蓋用)、普通都章縦、短足都章縦の逆向き(左蓋用)である。

特殊人孔蓋を分類するためのポイントは都章(下水道用の紋章=下水君)に有る。
(1) 都章の足の長さはどうか(短いか、長いか)。
(2) 都章がどちらを向いているか(縦向きか、横向きか)。
(3) 都章の中央の形状(平か、窪みが有るか)。
(4) 外枠の角(角丸か、四角か)。
に寄って分類が可能だ。

それではそれぞれの都章を見比べてみよう。(いずれも中間蓋の例)

短足穴都章縦

短足穴都章横

短足都章横

短足都章縦

普通都章横

普通都章縦

それでは個々の詳細を順に見て行こう。

【短足穴都章横】

暗い木々の下に有るので雨天の後にフラッシュ撮影を行った。
表面が乾いていると判読は困難である。
左から、短足穴都章縦、短足穴都章横、短足都章横、短足穴都章縦の4枚組である。
現存する特殊人孔蓋の中では最もレアなタイプだと思う。
今のところ写真の蓋一枚(白枠の部分=中間蓋)だけしか発見できていない。

先述の駅から氏の記事に寄ればこの蓋は、『 昭和8年に設計標準の設計変更が行われた後に発行されたと思われる東京市下水道設計標準圖に掲載されている。 』 とあるので誕生がはっきりしている特殊人孔蓋の中では唯一の戦前生まれとなる。

【短足穴都章縦】

短足穴都章縦の特徴は右端用、中間蓋用、左端用の3タイプが有ることだ。
しかし写真の様に3枚組で綺麗に揃った蓋は少ない。
多くの場合は中間蓋が他のタイプだったり、向きが逆にセットされていたりする。

【短足都章横】

短足都章横は両端用と中間蓋用の2種類が存在する。
すなわち、組み合わせた場合はどちらかの端が逆向きになる訳だ。
両端用の蓋の都章が枠に対して背を向けているのが正種。

こちらは亜種。
両端用の蓋の都章が枠に対して正面を向いているのが亜種の特徴である。

中間蓋にも些細な違いが見られるが、それはPCの画面に両者を並べてみれば…の話で屋外では影もできるので違いを見分けるのは困難だと思う。
しかし駅から氏もご指摘されている様に、正種と亜種が混じり合った組み合わせはまだ未見なので現時点においては、正種の両端用に組み込まれている短足都章横の中間蓋で有ればそれは正種の中間蓋だと思っても差し支えないのではないかと思う。
同様に亜種の両端用に組み込まれている中間蓋は亜種の中間蓋と解釈しても差し支えないと思う。

【短足都章縦】

右端用、中間蓋用、左端用の区別が存在する。
この蓋は地域性が有る様で都心部では見掛けないが、練馬区や板橋区内では時折見かける。

角(かど)の丸い蓋にも右端用、中間蓋用、左端用が存在する。
この角の丸い蓋は普通都章になってから登場したと思っていたが、短足都章縦にも存在した。
この蓋の存在により、短足都章から普通都章への過渡期には四隅が角型と丸角型が混在する時期が存在することが新たに判明した。

【普通都章横】

右端用、中間蓋用、左端用の区別が存在する。
短足都章縦に四隅の丸角型の蓋が存在するならば後から製造されたであろう、この普通都章横にも有っても不思議は無いが未だに見たことが無い。

【普通都章縦】

角型。右端用、中間蓋用、左端用の区別が存在する。

丸角型。右端用、中間蓋用、左端用の区別が存在する。

以上で特殊人孔蓋、個々についてのまとめを終了する。
なお、類似する蓋が存在するがそれらについては別の機会にお届けしたい。

【受枠】

蓋を受ける側、受枠にも目を向けてみたい。
基本的には蓋の枚数に合わせた枠を使用するのが筋であるが、蓋の一部を切断して枚数を増やしたり減らしたりして設置されているのを見掛けた事がある。

この写真の枠を見ると上辺と下辺の同じ所に切れ目が見える。
切れ目は2ヶ所あるので2枚組の枠を3枚入る様に改造したのではないかと思う。
(4枚用の枠を3枚用にするには切れ目は上下各1か所で済むはずだ)

【余談】

今回は東京都下水道局の特殊人孔蓋についてまとめてみたが、蓋のメーカーのカタログなどを見るとこれ以外にも多様な特殊人孔蓋が存在することに改めて驚かされる。
例えば同じ下水道局にGLVと呼ばれる蓋が有る。

GLV
鉄蓋工業の製品であるがこれも特殊人孔蓋と記述されていた。

手鞠風のこの蓋も特殊人孔蓋だ。
長島鋳物製で、カタログには『下水道内部圧力に耐えるように設計されています』とある。
外側に突き出た3箇所の丸い部分でボルト締めできるようになっているらしい。
紋章は都章だけだが、これは東京都建設局の蓋だと思う。

長島鋳物のカタログにはこれら以外にも数種類の蓋が特殊人孔蓋として紹介されている。
いずれ資料が揃った段階で記事化できたらいいなと思う。

(2014.06.20 初稿)
(2021.07.31 加筆・移設)